TAKANO シャトーヌーベルクロノメーター 実機レビュー ムーブメント編

TAKANO

 

 こんにちは海豚です🐬。

 今回は「TAKANO シャトーヌーベルクロノメーター」実機レビュー第2部「ムーブメント編」になります。前回をご覧になってない方は、下にリンクを貼り付けておきますので先にご覧ください。

TAKANO シャトーヌーベルクロノメーター 実機レビュー 「文字盤・ケース編」

 「TAKANO」の文字盤やケースは、浅岡肇さんのセンスや技術が光るものでしたが、ムーブメントも大きな苦労や物語が詰まっています、ぜひブログを楽しんでいってください。

ムーブメントは「ミヨタ」だが、国産時計初の超高難易度の「ブザンソン」天文台クロノメーター通過 果たしてどれほどすごいの?

 新生TAKANO「シャトーヌーベル・クロノメーター」は文字盤に「CHRONOMETER」の文字を入れることを許された、現代ではほとんど見る事ができない国産時計である。「CHRONOMETER」で有名な国産時計といえば、ニューシャテル天文台向けの「Cal.4522A」を積んだセイコー。この伝説的なセイコーの天文台クロノメーター機は125本しかなく、マニアの中で人気のため市場価値は500万円を超える場合もある。

 タカノクロノメーターがクロノメーター検定を受けたのは、ニューシャテル天文台ではなく、フランスの東部の「時の都」こと、「ブザンソン」にある「ブザンソン天文台」である。なぜなら国外の時計を検定してくれる著名な天文台はこの「ブザンソン天文台」のみであるからだ。

 ブザンソン天文台は、あの「ジュネーブ天文台」、「ニューシャテル天文台」と同じ精度検査を行い、地元フランスの時計業界や地域経済の発展に大きく寄与していた歴史と格式ある天文台だ。ブザンソン天文台は1885年から約3年間で600個を超えるクロックにクロノメータ検定合格を与えている。1897年には合格時に証明書に加え、ムーブメントに「テット・ドゥ・ヴィーベル」(蛇の頭)の紋章がムーブメントに刻印されるようになった。タカノクロノメーターのムーブメントにもこの「テット・ドゥ・ヴィーベル」が刻まれている。

 ブザンソン天文台の検定を合格した国産時計は「タカノクロノメーター」以外は存在しない。

自動巻きローターの左上にあるのがテット・ドゥ・ヴィーベルの刻印。PWT002Cは、おそらくTAKANOとして天文台に合格した二番目の時計である。※画像は「TAKANO公式サイト」引用。

 ブザンソン天文台検定はロレックスの「COSC」より圧倒的に難易度が高いという。COSCはムーブメント単体で試験を行い、軽い仮針の使用が認められているのに対して、ブザンソンはケーシングして、製品が完成した状態で試験が行われる。ケーシングすれば調整時よりズレが生じてしまうものだ。

 タカノクロノメーターは、国産汎用ムーブメント(ミヨタ製)を搭載し、それを「東京時計精密株式会社」の極めて手練れの技術者によって、一部の部品(おそらく緩急針 エタクロン⇨トリオビス 等)が置き換えられて、入念に調整後、磁気シールドが備わる特殊なペリカンケースに梱包してブザンソンに送られている。

 かなり厳格に精度調整を行なったにもかかわらず、最初に送った10本のうち合格したのはたったの3本。不合格のものも計測結果は出るので、フィードバックして精度調整もより厳格に行なっても合格率は6割だという。

 浅岡肇さんは、ブザンソン天文台に行った際に、「フランソワ・メイヤー」博士(天文台の研究所長)に全体の合格率を聞くと意外にも高く9割に近いという。しかし、この天文台検定を受けるのはアクリヴィアの「レジェップ・レジェピ」や 「カリ・ヴティライネン」など価格帯が全く違う(数千万レベル)。逆にいえばこんなハイエンドブランドでも落ちる個体はあるほどブザンソ厳しいのだ。それをミヨタムーブで検定を通すロマンがある。

 「より厳しい自社検定を設けるよりも、第3者による厳しい検定を通すことが、ブランド価値の向上につながる」。浅岡さんの言葉は非常に納得のいくものとなっていると思う。

 そして、日本製のムーブメントで「ブザンソン天文台」の検定を合格する。これが高野精密工業が目指した「世界的高級時計」の現代的な解釈になっているのだと筆者は強く感じた

シースルーバックはマニファクチュールの仕上げの良い高級モデルに採用されがちであるが、本作は汎用ムーブメント。ブザンソンの合格認定が、ムーブメントへの刻印であるので、それを見せるためという点も大きいが、職人が試行錯誤し調整をした熱意のこもったムーブメントに心を動かされる人も多いだろう。

タカノ シャトーヌーベルクロノメーターの希少性や今後は

 タカノクロノメーターの生産本数は、うまく行って「年産100本」であるという。これは出し惜しみしている訳では無く、「ブザンソン天文台」の検定装置が1つしか無いことが原因であるという。そのため、天文台の年間のキャパは400本程度なので、タカノは相当頑張っている方だ。

 しかしながら、「タカノクロノメーター」は当面、定番モデルとしてしばらく生産される予定なので、抽選も気長に待てば回ってくると思われる。

 油断できない面といえば、浅岡肇さんの自身の名前を冠した時計が、もう買えないレベルで行列を成していることは有名であるが、「クロノトウキョウ」の海外での成功から、大変注目されている点である。「ブザンソン天文台」合格という、付加価値が世間に知れ渡ると、その影響力から、もっとたくさんのブランドに普及する可能性があるし、そうなれば天文台のキャパシティはすぐにオーバーしてしまうかも知れない。また、タカノクロノメーターは今後、クロノグラフや2針、ポインターデイトなどの機構を積んだモデルを展開する予定とのことだが、限度が100本である事は忘れてはならない。

 だからと言って転売して利益を出すようなモデルにはならないと思うし、日本の「世界的高級時計」を目指すからには、ロレックスのように2次市場にタカノが溢れることは誰も望んでいないであろう。浅岡肇さんも、組織的な転売ヤーを見分けるノウハウを持っているとYouTubeの対談動画で話されていたので、期待したいところではある。

終わりに… タカノシャトーヌーベルクロノメーターは素晴らしい

 海豚は独立時計士の時計への憧れはあったが、手に入れれるとは思いもしなかった。

 特に日本が誇る独立時計士「浅岡肇」さんとなると尚更だ。

 もちろん生粋の浅岡肇さんの時計ではないが、デザインに「浅岡肇」さんが詰まっており、高野精密工業の情熱も、日本人として大変共感できるものになっていると思う。

 そもそも浅岡肇さんは、「同じ時計はもう作りたくない」、「ほとんど売らない」と公言している。だから、「TAKANO」はTAKANOでありながら、庶民が買える最高峰の浅岡さんの時計と思っている。

 「クロノトウキョウ」でも勿論その願いは叶うのであるが、「タカノ」は世界に打って出る覚悟が詰まっているし、コストが掛かっているので、やはり時計としての完成度が高い(クロノトウキョウもめちゃくちゃ欲しいですが…)。

 こんな時計に縁があった事は感謝していると同時に、微力ではあるが、この魅力を発信し続ける事が責務であるとすら感じている。

 このブログを通じて「TAKANO」の魅力を感じてくださる読者の方がいればこの上ない幸せであると思います。

次は3ヶ月ほどを目処に着用レビューを作成したいと思います✨

今後とも海豚の日常をよろしくお願いします🐬。

 

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