こんにちは、海豚です🐬。
今回は 2024年5月24日に「銀座アワーグラス」で行われた「ナルダンナイト」という、ユリスナルダン、特に「フリーク」を中心とした講演会及び、店員さんやオーナー同士の立食パーティーイベントに参加しました✨。
講演会や、ユリスナルダンサービスマネージャーの田澤さんに対するインタビューによって得た情報を、自分なりの解釈を交えて実機レビュー等と共に書き起こすことができたらと思っております。
是非楽しんでいってください✨✨。
ナルダンナイト の目玉「フリークS ノマド」実機レビュー
本イベントの目玉は間違いなく、2024年4月のウォッチアンドワンダーで発表された「フリークS ノマド」の日本初のお披露目でしょう。
フリークSは2022年に発表されたフリークの進化版であり、2022年モデルは一般的な文字盤にあたる「アワーディスク」は綺麗なアベンチュリンディスクであった。
本イベントでは「フリークS ノマド」等の実機を実際に手にとって見ることができた
フリークSノマドが発表された時、正直2022年のフリークSのアワーディスクが「ギョシェ」に変わった事が一番のポイントであるが、正直退屈さを感じました。しかし実機を手に取ってみると、これはユリスナルダンの技術の結晶であると確信し、アワーディスク一つをとっても唯一無二であると感じさせられた。
ギョシェアワーマーカーは、ダイヤモンドの形をしたギョシェパターンにサンドカラーのCVD加工を施し、波打つ砂丘がイメージされているとのこと。発表当時の公式の紹介ビデオでも、ムーブメントのダブルオシレーターを、ヘリのペラに見立てて、砂丘の上を飛行しているようなものであった。
砂丘…サンドカラー…ゆえに、非常におとなしめなデザインであると思いきや、この時計、非常に華やかでした。
ギョシェは時計の美しく見せる技法の1つであるが、一般的には非常に細かく、じっくり目を細めて堪能するものであるが、フリークSノマドは違う。深さもあり、鋭利さもある大胆なギョシェが光を複雑に反射して圧倒的な存在感を放つ。
何故ここまでの輝きや存在感を放つギョシェが作成できるのか、サービスマネージャーの田澤さんの予想によると、普通の時計では、オーバーホールで針を取り外す際に文字盤に負荷をかけるが、ギョシェが鋭利すぎると潰れたり傷がつく可能性が上がるとのこと。フリークSは負荷をかける必要が無いのでこのような文字盤が可能になったとのことだ。もちろんナルダンの熟練された技師の技術がなければ作れないものでもある。
このアワーディスクのギョシェは電子機器やレーダーガイダンスを一切使用せず、18世紀の希少なローズエンジンを熟練した職人が手回しでギョシェ入れをしているとの事だ。
ギョシェ入れは240回ものの連続した動作が必要で、3時間、一切休憩するどころか、一息つく事なく行われている。これは非常に繊細な作業を手動で行うゆえに、手を止めると多少のズレを生じてしまうからであるらしい。尋常ではないレベルの集中力、スキル、忍耐力が必要であることが予想できます。
手作業にこだわる理由はちゃんとあり、1つは「職人の手作業というロマンスと美しさ」、2つ目は「機械の自動運転の際に生じる振動がないため、仕上がりが滑らかであること」、3つ目は「手作業のために個性が生まれ、全く同じものは2つと無い点」である。この作品はユリスナルダンの中では、オート・オルロジュリーやメティエダール等の希少な且つ最も精巧な技巧を駆使した叡智の結晶との位置づけです。
前回のフリークSアベンチュリンでは、「シリコン製オシレーターとテンプ、ダイヤモンドシルを施した脱進機、垂直ディファレンシャルでリンクするダブルオシレーターグラインダーの宇宙船のようなムーブメントが主役で、それを引き立てるアベンチュリンアワーマーカーであったが、今回はそれに加えてユリスナルダンの伝統的なクラフトマンシップを合体させた、まさにユリスナルダンの力をこれまでもかと詰め込んだ傑作であることが理解できた。
フリークS だけではない レアモデルや新作達 まずは廃盤の「クラシコ」
まずはユリスナルダンのドレスウォッチライン「クラシコ」だ。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、「クラシコ」は廃盤となっており、公式サイトから定番モデルは削除されている。しかし、持続性はない可能性が大きいが、超少量生産を行なっていることからナルダンとのパイプが太いアワーグラス銀座には定番モデル3色、そしてアワーグラス限定モデルが置かれていた。
クラシコの左手前の白、黒文字盤は「グランフーエナメル」、奥のブルーはギョシェに「フランケエナメル」を施したもの、奥のアイボリー文字盤は銀座アワーグラス限定モデルで、ギョシェダイヤルにラッカーを施したモデル。ここで海豚はクラシコの選び方を、ユリスナルダンサービスマネージャー(時計士さん)の「田澤」さんに聞いてみた。
まずグランフーエナメルのモデルは、非常に難易度が高く、6割は焼成途中で割れたりして台無しになるとのことで、特に黒色の釉薬は均一に塗布することが難しく、時間を要する。
ブルーギョシェ文字盤は、グランフーエナメルより低温のため、焼成中の割れは少ないものの、ギョシェということで文字盤一枚あたりのコストは大きいし、ギョシェに均一に釉薬を塗布する技術も必要である。
アワーグラス限定モデルは25本限定で、ノンデイト、針はブレゲ針、アワーマーカーはアプライドでWGコーティング、自動巻きローターも22Kと特別仕様。現在は上記3モデルより5万円安い。2024年3月の時点では3本ほど残っていたが、現在もあるかは問い合わせてみるしかないだろう。詳細については以前ブログでまとめている↓。
海豚は、なぜ3色同じ値段なのか疑問ではあったが、それぞれコストがかかっている、コスパの良さのベクトルが違うことが分かった。つまり好みのモデルを選んでも全然大丈夫であるが、白と黒のグランフーエナメルで迷った際は、黒色をお薦めしたい。
原点に戻って、クラシコは他のモデルと比較してどう優れているか聞いてみた。ユリスナルダンのデイト付きモデル ほぼ全てに採用されている、日付逆戻し機能(普通の時計は日付調整の際は進めることしか出来ないが、戻すことができる機能)、これを薄いクラシコに採用することは非常に技術がいる事だという(そもそも日付逆戻し機能は結構複雑で、ユリスナルダン以外採用されている機械式時計は非常に少ない)。ユリスナルダンは機械に付加機能(パワリザ等)を加える場合、モデルごとに創意工夫をし、専用の部品を作成している、そのため上記逆戻し機構を薄型時計に加えられるという。ユリスナルダンの3針時計は他ブランドの3針に加えて部品数が多いのはそのためだ。ゆえに限定モデルはノンデイトなので、クラシコの強みを外しているという事だ。もちろんこれはあえてであり、独自の美的センスによるもの、ノンデイトを好む愛好家も多いはずだ。
部品数が多いと、整備性が悪くなると思われるが、ユリスナルダンは非常に整備しやすいとの事。実際悪いムーブメントは整備性が悪く、良質なムーブメントは整備性が良い傾向があるという。整備性は整備士だけの問題では無い。整備性が良ければ、オーバーホール後の不具合の可能性が下がるし、整備期間も長くなりにくい。一生物の時計として長く保有したいと思う人ほど大きなメリットになる。
ここまで良い時計なのに何故、クラシコは廃盤になってしまうのか。理由はユリスナルダンの売上のほとんどはアメリカ、ロシアであるからだという、これらの国は、腕周りもしっかりした人が多く、大きい時計を好む人が多いようだ。確かにナルダンのラインナップを見ると、大きくて一目でわかる派手な時計が多い。クラシコはある意味ナルダンらしくないのだ。
しかし細腕さんが多い、アジア圏からクラシコ廃盤を惜しむ声は多い、なので特別に超少量生産しているが、世界経済の鈍化で売れなくなれば、本当に生産されなくなる可能性はある。何せ、エナメル文字盤なので歩留まりも悪い。クラシコを狙っている方は最悪を想定するべきでしょう。
クラシコ 1,760,000 円(税込)
アワーグラス限定 1,716,000 円(税込)
環境にやさしい色気ダイバー 「ダイバー ネット OPS」
5月23日発表のほやほやの新作時計「ダイバーネットOPS」だ。ミリタリーなカーキグリーンが男心くすぐるOPSシリーズでは初となる「ダイバー」での展開だ。95パーセントリサイクルステンレスのケースが採用されているが、ケースサイドや裏蓋は漁網からリサイクルして作られた新素材「ナイロ」が60パーセント、残り40パーセントもリサイクルカーボンで構成される。回転ベゼルもカーボニウムが採用され、一つとして同じものはないマーブル模様で特別感がある。海洋保全活動に積極的なユリスナルダンらしい時計であり、ブランドとしては重要な立ち位置にいると思えるが、一般的な消費者側の目線からすれば、魅力に直結するものではないと感じる。しかしながら、実機の質感はちゃんと高級感があるので、そこら辺の心配は必要ない。
12時位置にパワーリザーブインジケーター、6時位置の日付ももちろん逆戻し可能、脱進機はシリシウム製、さらにダイヤモンドシルが施されているのはこの価格帯においては素晴らしいことだ(クラシコに採用されるUN-320はダイヤモンドシルは施されていない)。ダイヤモンドシルとは、シリシウム素材にダイヤモンド皮膜をコーティングする技術のことで、耐久性が飛躍的に向上する。
ケース径44mm、ケース厚15mm
キャリバー UN-118「自動巻き、パワーリザーブ60時間、振動数4Hz」
2,090,000円(税込)
技術の結晶 「ブラスト アワーストライカー」
こちらはユリスナルダンの技術の結晶「ブラスト アワーストライカー」。超複雑機構トゥールビョーンとアワーストライキング機能を搭載している。アワーストストライキング機構は毎正時と30分ごとに自動的にゴングを打ち鳴らす機構であり、プッシュボタンを押すことで、上記画像のように4時であれば、4回ゴングを鳴らしてくれる。
このモデルはただ音が鳴るだけでは無い、オーディオブランドのデビアレ社とコレボレーションすることで、同社の音量増幅機構をゴングサポートに組み込んで音量を増幅し、裏蓋に設けられた音響調整ネジで、振動を変えて音質の調整を可能としている。もちろんゴングの音色にも音響メーカーならではのこだわりが積み込まれている。
10時位置のプッシュボタンを押すことで、現在の時間をゴングで知らせてくれる、ゴングを聞くのに時間を合わせたり待つ必要は無いのだ。
ユリスナルダンらしいところは、やはりこの複雑機構の細かな動きを前面から見れることだろう、トゥールビョーンは勿論の事、アワーストライキング機構まで見られるモデルはこの他に知らない。
ブラストシリーズの複雑機構モデルは、トゥールビョーンのみ搭載のモデルがある。スケルトンとなっているため、非常に見応えがある。
ブラストは、アヴァンギャルドな見た目や、複雑機構がいかにもユリスナルダンらしく、これからブランドを牽引してくれる存在になると思っている。
ユリスナルダンのフラッグシップ 「フリーク」
フリークの新作も勢揃いだ。
左のカーキグリーンは「フリーク ONE OPS」。中央奥のゴールドケースのものは「フリーク ONE」。右側二つはリューズ付きのフリークXだ。
フリーク ワンはユリス・ナルダンの革新性と卓越性への取り組みを象徴するモデルです。パワーリザーブ90時間の自社製自動巻きムーブメント、キャリバーUN-240を搭載し、自転するフライング・カルーセル・ムーブメントはシリコン製の特大オシレーターとヒゲゼンマイが備わっています。脱進機にはDIAMonSILコーティングを施し、精度と耐久性がさらに向上させました。ブラックのDLCコーティングの44mmチタンケースはサテン仕上げで、ローズゴールドの5Nベゼルがそれを引き立てます。ストラップは、製造廃棄物からリサイクルされたラバーを30%使用したBIWI社のブラックのラバー製「バリスティック」です。 フリークの独特のフォルムは、20年以上前にハイエンドウォッチの常識を塗り替えて以来、文字盤、針、リューズなしの3つを大きな特徴としてきました。そしてそこに君臨するのは回転して時を告げるムーブメントです。
ユリスナルダン公式サイト引用
フリークONEのコンセプトは「グレート・リセット」もし今、フリークをリリースするならこう設計されていただろう というものだ。
そんなフリークONEは、2023年、時計界のアカデミー賞 GPHGにおいて アイコニックウォッチ賞を受賞した傑作だ。2001年にフリークがリリースされた当初、世間の目は冷たく、画期的な設計でありながら評価が得られなかった。そんなフリークが生まれ変わり、賞を受賞したことはブランドの歴史の中で大きなものになる事は間違いない。
フリークはムーブメントが回転して時を告げるこれまでにない時計で、文字盤も針もなく、そこに君臨するのはムーブメントです。フリークXティブルーは非常に汎用性が高く、普段遣いに最適です。ブルーのPVD加工を施した43mm径のチタンケースは軽くて頑丈で、サファイアクリスタルのケースバックからは自社製自動巻きムーブメントUN-230を眺めることができます。時計の中心には、フリークの特徴である自転するフライング・カルーセルの動力源となる大径のユニークなオシレーターが組み込まれています。「フリークXティブルー」は、ホワイトの「ポワン・ド・ブリッド」ステッチを施したアリゲーターまたは透かし彫りのビール(仔牛)レザーストラップとの組み合わせで、エレガンス、機能性、汎用性が見事に融合したモデルです。フリークXティブルーで日常のラグジュアリーの歓びをご体験ください。
ユリスナルダン公式サイト引用
日常使いのフリークを謳うフリークX。メカニカルを簡素化し、値段を抑えたおかげで、フリークファンが手を出しやすくなった。フリークの特徴である自転するフライング・カルーセルの動力源となる大径のユニークなオシレーターの迫力は、オリジナルのフリークに全く劣らない。
グランフーエナメルが美しい 「マリーン トゥールビョーン」
アヴァンギャルドな時計が多い中、クラシコに並んで王道かつクラシックなデザインのマリーン。
ユリスナルダンの歴史の中で、航海用マリンクロノメーターを各国に供給していたことは有名で、日本においても、日露戦争で大日本帝国海軍の連合艦隊旗艦を務めた戦艦「三笠」に、ユリスナルダンの製品が搭載されていた。そんなユリスナルダンの栄光でもあるマリンクロノメーターを腕時計に解釈した本モデルの魅力は語り尽くせないほどある。
そんなマリーンの最高位モデルとも言えるトゥールビョーンはエナメル文字盤の特別仕様、脱進機は勿論シリシウム製であり、色分けされた、繊細なガンギ車やアンクルの動きをしっかり観察できる。シリシウム製のオシレーターにはユリスナルダンのアンカーロゴが繰り抜かれているが、さすがはシリシウムのパイオニアであるナルダン。このメゾンでしかなし得ない技術だろう。
クラシコが廃盤となった今、マリーンはユリスナルダンのビジネス・デイリーウォッチとしての活躍が見込まれる。直径42ミリと大きいケースであるが、その分視認性は大変良く、デザインバランスもマリンクロノメーターをうまく表現できている。パワーリザーブインジケーターも意外と便利な機構であるし、日付逆戻し機構もある、それぞれ独自の機構により駆動されている。これはマニファクチュールブランドにしかできない、部品数は多くなるが信頼性や整備性は高い(田澤さん曰く)。マリーントルピユールは3針モデルであっても脱進機にダイヤモンドシルコーティングがされている点も素晴らしい。
最後に
ナルダンナイトは田澤さんの講演や、数々のタイムピースの試着、ナルダンオーナー同士での時計トーク等で、大変有意義に過ごすことができた。
やはり銀座アワーグラスとだけあって、大変貴重なコレクションを持っている方が多数いらっしゃった。
このような貴重な経験を得るだけのために、アワーグラスでユリスナルダンの時計を購入しても良いほどだ。手前味噌ではあるが、クラシコアワーグラス限定は素晴らしいデザインなので、ぜひアワーグラスへ行った際はみてほしい。
最後に、田澤さんに「ユリスナルダンの時計を何故好きになったのか」を聞いてみた。
ユリスナルダンは、今でこそ知名度を上げてきたが、昔は本当にマイナーであった。それでもヴィンテージ時計が好きなマニアの間では有名で、何故かといえば機械の出来が良かったから。前オーナーが悪い使い方をしていなければ、安く精度が優秀で、デザインも素晴らしい時計が手に入った。
機械の出来が良いのは、ユリスナルダンの整備ライセンスを取ってから10年以上整備してきても実感する。現行の時計でも、大事に使えば一生モノになる。これをエンジニアの目線からも言えると思います。
オーナーの方は、今お持ちのコレクションを長く使ってヴィンテージにする。これは大変男のロマンを感じますね。私としても、長く愛用してもらいたいです。
田澤さん
まさにユリスナルダンの時計は一生ものにふさわしいと、海豚も田澤さんの言葉で実感しました。いくら永久修理を謳っているブランドでも、故障が多ければ負担も大きい。整備士目線からもメンテナンス性や故障の少なさの信頼があることは非常に重要だと感じました。
最後までご覧いただきありがとうございました✨🐬
次の投稿を是非お楽しみに✨✨。
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